先日、司馬遼太郎の上・中・下巻に及ぶ小説「関ケ原」を読破しました。大変面白く映画でも見てみたい!と思いツタヤでDVDをレンタルしてきましたので感想を述べます。
早口&小声でセリフが聞こえづらい
一番に気になったのがコレ。早口でかつ小声のセリフが多くて聞き取れない。また薩摩兵の訛りもすごくて何を言ってるのかがわからない。しかも映画の良くあるパターンで、声が聞こえにくいから音量を上げるとBGMはやたら爆音。
DVDは幸い字幕機能があったので途中で巻き戻して字幕付きで見ました。
理由は監督のこだわりにあり
この映画「関ケ原」の監督を務めた原田眞人さんには、カメラを回して演技を始めたらカットがかかるまで演技を止めるな!というこだわりがあるそうです。
多少言葉に詰まったり声が聞き取りづらくても、演技全体として良いと監督が判断したらそれでOKが出るそうです。たしかに三成役の岡田さんをはじめ演技は素晴らしかったですね。
キャストは豪華、ただし初芽は...
キャストの豪華さも特徴の一つです。
主役の石田三成役の岡田准一さん、徳川家康役の役所広司さん、小早川秀秋訳の東出昌大さん、そして初芽役の有村架純さんなどなど。
演技も素晴らしく引き込まれるのですが、初芽に関してはネットで酷評も多いようです。映画では初芽は伊賀の忍びという設定ですが、原作の小説とは異なります。
有村架純さんは好きですし悪く言いたくないですが、忍びにしては動きがノロマすぎ...しかも合戦の裏でいろいろ動いてたわりに物語に対して絡みません。笑
相関図・人物名が分かりづらい
特に戦国時代や戦国武将が好きでもないかぎり人物関係がややこしく感じると思います。
また同一人物でも名前がいろいろあり、例えば三成なら”石田治部少輔三成”と言います。治部少輔は役職名です。三成を憎む福島正則らは「治部少めが!」と言ったり、秀吉は三成の幼いころの名前である「佐吉」と呼んだりしてややこしいです。笑
映画では語られなかった点を紹介!
先ほどの初芽の例もそうですが映画は所々原作と異なっています。
また1500ページ近くある原作小説を映画では2時間半に収めています。端折っている部分もある多分にあるため映画のみを見た方は「これどういうこと?」と不思議になる点もあったのではないでしょうか。
僕も見ていて特に気になった3点を解説します。
なんで毛利軍は南宮山に行って動かなかったの?
映画ではあまり語られていなかったかと。実は毛利軍は関ケ原の前から、徳川方の黒田長政と繋がっていました。つまり徳川方に寝返っていたのです。
そのため三成の再三の攻撃要請も無視し続けました。このとき「弁当の準備をしている」と言って攻撃拒否したため「宰相殿(毛利輝元)の空弁当」というエピソードになりました。
ちなみに南宮山は家康本陣の裏手にあり家康の後方をカバーできるうえ、山麓にいる長曾我部軍などを牽制することにも役立ちました。
島津軍の攻撃不参加
合戦中、三成が自ら島津軍に赴き攻撃に参加するよう要請するシーン。島津軍は「西軍は勝てない」「夜襲した方が良かった」と言って攻撃に参加しません。
ここをもう少し掘り下げると、島津軍はその本拠地が九州にあるため1000人ほどしかいませんでした。勇猛で知れた島津軍ですが、人数が少ないため三成はあまり厚遇をしなかったのです。
そしてもう一つ、関ケ原の前哨戦ともいえる戦いが大垣城近くであり西軍が撤退することになったとき、三成は島津軍を見捨てて撤退したのです。彼には「兵を束ねる将は命を守らねばならぬ」という信念がありましたが当然島津側からすると「腰抜けめ」としか思いません。
こういった経緯のため三成に良い感情を持っていなかったことも、島津軍の攻撃不参加の理由になります。
大谷刑部少輔吉継の小早川対策
関ケ原前夜、三成と大谷刑部が話すシーンで大谷が「金吾(小早川秀秋)が裏切ったときの対策をとる」と言っていました。
しかし実際に小早川軍が大谷軍に攻め込むとあっけなく壊滅、となったことに「いや対策は?」と思った方がいるのではないでしょうか。
実はここ、原作小説だと大谷刑部はしっかり対策をとっていたのです。あらかじめ想定していたし鉄砲隊も伏せて備えており、小早川軍を後退させる働きをしました。
その後、大谷軍にいた朽木隊、脇坂隊などが藤堂高虎の工作によって裏切ったため、大谷軍は壊滅状態に陥ってしまったのです。
もう一つ余談を挟むと、大谷刑部は生前の秀吉に「百万の兵を与えて思う存分戦わせたい」と言わしめたほどの名将なのです。病に蝕まれていましたが、その器量は西軍随一といっても過言ではありません。
映画「関ケ原」の感想・解説でした。映画を見てより詳しく知りたい!と思った方は司馬遼太郎の原作小説の方も読んでみてください。めちゃめちゃ面白いです。^-^
